会長メッセージ(2022年1月)
1.コロナ禍で、生き残り策を真剣に考えた経営者は前進できます。
コロナ禍は今年も続きそうですが、これまでの2年間に、生き残るためにはどうしたら良いかを真剣に考えた経営者は、そうではない経営者とは異なり、自信をもって前に進むことができるのではないでしょうか。
このところ、事業再構築補助金を申請する企業の支援を行うことが多くなっていますが、採択され、交付申請する段階で、経営者が決断しなければいけない事柄が多く、忙しすぎるために決断できないと嘆いていらっしゃる経営者が多いようです。
従業員への権限移譲を行おうとして、迷いが生じるようです。従業員の負担が重くなると従業員が辞めてしまうのではないかと気がもめるとか、経営者が行っていた仕事を従業員に任せたときに従業員が活き活きと行動するようになり、そのことで、自分の大事なものを取られてしまったような寂しさを感じることもあるようです。しかし乍ら、経営者が本来行うべき仕事に集中できることを実感できると、経営者の役割の価値の高さを感じて、自信をもって前進できるようです。
経営者が本来やるべきこととは、目標達成するまでのロードマップの実践を指揮することです。従業員は生き生き働くとしても、成果が出るかどうかは別ですので、確実にPDCAを回すことが必要です。
どうすればよいかは分かっていても、それを実践できるかどうかが差を生みます。 実践するための課題は、経営者と従業員との信頼関係を築くことであると思います。
2.経済産業省が行う「健康経営」
経済産業省では「健康経営」を行っている企業を登録し発表しています。従業員の健康を重視した経営を行っている企業として認定登録できれば、優秀な人材を採用でき、ステークホルダーからの信頼を獲得でき、業績が上がり、株価が上がるといったメリットを享受することができます。
国のメリットとしては、超高齢化社会の課題解決のために、国民の健康寿命が伸び、国民の幸せ感が高まり、医療費が改善されることです。
ここでの健康とは、病気ではないということだけでなく、心身共に良好で、行いたいことが行えて、成果を出すことができ、幸福であるレベルを求めています。 健康経営優良法人としての認定されるためには、「健康宣言の社内外への発信」「健康づくり担当者の設置」「推進計画の策定」「従業員の健康診断受診率100%」「健康に関する教育」「食生活改善」「運動機会の増進」「睡眠不足ではない」「メンタルヘルス不調者への対応」「感染症予防に関する取組」等を実施していることが要件となります。
3.世界保健機関(WHO)の憲章に基づく「ウエルビーイング」
「食事・睡眠・運動・経済力が足りていれば、理解力、判断力、実行力が高まり、やりがいのある仕事ができる。」このような状態を「ウエルビーイング」と言います。
このことは1948年に設立された世界保健機関の憲章前文で記述されており、それを実践するために、多くの専門家が研究し、持論を発表しています。
当時の日本の労働市場では受け入れられないことだったと思いますが、情報が発達した現在では、働く人の意識が高く、就職する企業のレベルを評価していますので、優秀な人材を採用するためには、人事体制を整える必要があります。
雇う側も、働く側も、「ウエルビーイング」であれば、生産性の高い組織を作ることができる筈ですので、経営者はリーダーシップを発揮していただきたいと思います。
4.従業員が自主的に働く仕組みづくり
意識が低い従業員が多いと、楽しく遊んでしまいがちですので、生産性の高い組織を育てる「仕組みづくり」が必要です。
アメリカの経営学者バーナードは、組織の成立条件として、「共通目標」「貢献意欲」「コミュニケーション」の3要素が不可欠であると説いています。
①「共通目標」を認識するためには、経営理念、経営方針を、伝わりやすい具体的な表現にし、繰り返し言葉にして、話したり、書いたりして、全従業員に浸透するように努力します。
組織目標を達成するためには、組織体制を明確にし、担当業務の権限と責任を明らかにします。ベテランになると権限と責任が重くなるように設計します。
②「貢献意欲」の高い組織にするためには、従業員のモチベーションを高い状態に保ち続ける工夫が必要です。従業員に対する感謝の気持ちを伝え、高い評価を与え続けることです。「ありがとう」「素晴らしい」「よくやった」といった言葉が職場に充ち溢れるようにするのがコツです。表面的な貢献意欲に終わらせず、専門性を深めたり、技術力を高める努力をすることが生産性を高めることに繋がりますので、この評価ポイントを強調します。
③「コミュニケーション」を行き渡らせるために、「Intranet」や「Slack」を活用する傾向があります。伝えるべきことが伝わっていないために大きな無駄が発生するリスクを避けるためです。「報告・連絡・相談」を守ると連帯感が高まります。
人材育成に熱心な企業では、従業員が独立する傾向がありますが、それだけ、優秀な人材が入社してきますので、流動性が高いことは望ましいことだと思います。
以上のように、組織活性化し、成果を高めるためには、コミュニケーションを徹底させることが有効ですので、経営者は、リーダーシップを発揮して望ましい組織づくりを行っていただきたいと思います。
以上です。
一般社団法人渋谷区中小企業診断士会
会長 瀬尾千鶴子
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