その広告、何のため? 〜The Modelと購買ファネルを知れば、補助金申請書類も肉厚に

 小規模事業者持続化補助金や事業再構築補助金では、広告費も対象に含まれます。

 事業者様の申請書類で私が危惧するのは、「SNS広告で効率的に」や「インスタ映え」「インフルエンサー使って」の表記と費用総額しか示さないケースです。投下可能な広告費を算出したにしても、どこかに聞いてみた情報を丸写しするにしても、ざっくりし過ぎて「ほんとにそれで、収益計画を達成できるの?」と思えてなりません。

 また、私は企業所属の診断士ですが、職場でも「取引先がネット広告をやりたいそうだが、何かおすすめある?」と聞かれます。そこで問うのは「お客様は、何を達成したくてネット広告と言ったの?」です。内心、困った営業だなと思います。

 なぜ、このやりとりがダメか、わかりますか?

「ラーメン」で考えてみる

 突然ですが、一旦この話を「ラーメン」に置き換えてみます。

 「ラーメンが食べたい」という人に「背脂ギトギトなラーメン?」「塩ラーメン?」と問いかけるのは、まあ普通でしょう。でも、その人が新たなラーメンとの出会いを求めているのか、単にいますぐガッツリ食べたいのか、二日酔いなのか、「置かれた状態」がわかれば、薦める麺は変わりますよね。

 広告に限らず、デジタルマーケティングも、ツボはそこなんです。

 この長い前置きがあれば、以降にカタカナが頻出しても、ラーメンに変換したり咀嚼して読めると願って解説します。

営業プロセスを4段階に分ける

 セールスフォース・ドットコムという企業が提唱する営業モデル「The Model」。

 IT企業と接点がある人は「インサイドセールス」「カスタマーサクセス」といった言葉を聞いたことがあるかも知れません。これは、お客様との関係がどの段階にあるかに応じて、営業の達成指標や目標値の設定、施策を4段階に分けたものです。

(1).  マーケティング:潜在顧客を獲得する

(2).  インサイドセールス:見込み客と関係をよくする

(3).  フィールドセールス(外勤営業):商談して受注を獲得する

(4).  カスタマーサクセス:取引を継続してもらう

https://www.salesforce.com/jp/hub/sales/the-model/
(細かな説明はこのウェブページをご覧ください)

 例えば(1)は、あなたの会社やサービスを知らない人に、どう気づいてもらうか。評価の仕方は、分母を発信した数、分子を反応があった数にして、効率を確認します。名刺やメールや電話番号など、今後あなたの会社から連絡が取れるようになった人の数が達成目標です。

 (1)のマーケティング段階(ラーメンなら「新たな出会い」模索中)と(3)のフィールドセールス段階(ラーメンなら「ガッツリ」マシマシに絞り込み済み)では、広告やSNSの使い方は違ってきますよね。そのことに気づいてもらうだけで、成果ありです!

 このThe Modelと一緒に覚えてほしいのが「購買ファネル」。ファネルとは「ろうと」。逆さの円錐形で、液体を注ぐのに入り口を広く、出口を狭くしたあれですね。これもまた、大きな入り口は「認知」から始まり、「興味・関心」「比較検討」を経て「申込・購入」に至ります。そして、その顧客が購入・利用を続けてくれる、さらには自ら発信したり推奨してくれるなら言うことなしです。

先のThe Modelと組み合わせると、記憶しやすいでしょう。

(1).  認知=マーケティング

(2).  興味・関心=インサイドセールス

(3).  比較・検討→購入・申込=フィールドセールス

(4).  継続→紹介→発信=カスタマーサクセス

 ただし、ひとつだけご注意を。「マーケティング」の定義です。

 人によっては「宣伝活動」と狭く捉えたり、The Modelだけを見れば「マーケティング=認知獲得」とも読めます。「価値創造」「売れる仕組みづくり」「セリング(単純な売り込み)の必要をなくす」「誰に、どんな価値を、どのように提供するか」…人によって、時代とともに、様々な定義づけがされる言葉です。
 筆者にとってのそれは「リサーチやログデータやアンケートでは顕在化しない、世の潜在ニーズに問いかけること」ですが、単なる広告・宣伝・プロモーションではないことをご理解ください。

「手段の目的化」を避けるために

 最後にこのコラムをまとめます。

 有料広告でも、インスタグラムやツイッターなどの無料投稿でも、「認知を取る」「興味・関心を増してもらう」「採用してもらう」「続けてもらう」の、どこに重きを置いて発信するか、どの段階の人々に伝えたいか、最初から「目的」を定めて準備することが重要なんです。

 「手段」は、ネット上でなくても構いません。
 でも、「手段」が効果的かを測ること、データを蓄積して次に改善したり過去と比較するには、デジタルをうまく使った方が時間も手間も減らせます。冒頭の補助金申請でも、「認知段階では〇〇、そこで得た見込み客には▲▲を行い、新たな受注を増やす。そして新規顧客が継続するよう××する」と書いた方が、他者であるあなたが読んでも戦略的に見えませんか?

 世の中には、広告をすることが「目的」のように売り込みに来る人もいます。また、デジタル施策の適正価格を知らないと踏んだら、情報の非対称性をズルく使う人もいるでしょう。
 そうではなく、自社の問題を表層でなく根源から捉え、達成すべき課題を立て、「手段」を一緒に考えてくれる人がいたら、解決の近道ですよ。

倉内佳郎

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