経営戦略に効く!補助金マッピング術 ― 成長フェーズ別に賢く使い分ける7つの支援策
中小企業が成長戦略を描く際、経済産業省の補助金制度は非常に有効な手段となります。特に、企業の成長フェーズや事業戦略と補助金の趣旨を整合させることで、経営資源の集中投下が可能となります。本コラムでは、アンゾフの成長マトリックスと企業の成長曲線の視点から主要な補助金を整理し、効果的な活用方法をご提案します。
1.アンゾフの成長マトリックスで整理
アンゾフの成長マトリックスは、「製品(既存/新規)」と「市場(既存/新規)」の組み合わせによって戦略を4象限に分類します。
アンゾフの成長マトリックス | ||
既存市場 | 新市場 | |
既存製品・サービス | 市場浸透 | 新市場開拓 |
新製品・サービス | 新製品開発 | 多角化 |
各象限に補助金を当てはめると下記のようになります。
(戦略区分が複数当てはまる補助金も存在しますが、当コラムでは1つに当てはめています。)
戦略区分 | 補助金名 |
市場浸透 | IT導入補助金、省力化投資補助金 |
新製品開発 | ものづくり補助金、成長加速化補助金 |
新市場開拓 | 小規模事業者持続化補助金 |
多角化 | 新事業進出補助金、事業承継・引継ぎ補助金 |
- 市場浸透(既存製品×既存市場):IT導入補助金は業務効率化を支援し、省力化投資補助金は人手不足解消を目的とした設備導入を促進します。
- 新製品開発(新製品×既存市場):ものづくり補助金は試作開発や設備投資による製品開発を支援、成長加速化補助金は地域経済へのインパクトを伴う成長事業を後押しします。
- 新市場開拓(既存製品×新市場):小規模事業者持続化補助金は販路開拓を中心に、広告・展示会出展など幅広く活用できます。
- 多角化(新製品×新市場):新事業進出補助金は新たな市場・事業への挑戦を、事業承継・引継ぎ補助金はM&Aや後継者による新展開を支援します。
2.成長曲線に基づく補助金マッピング
企業の成長は「創業・立ち上げ期」「成長期」「成熟期」「再成長期」「承継・次世代期」に分けられます。各段階で活用されやすい補助金は以下の通りです。

成長段階 | 補助金名 |
創業・立ち上げ期 | 小規模事業者持続化補助金 |
成長期 | IT導入補助金 |
成熟期 | 省力化投資補助金、ものづくり補助金 |
再成長・転換期 | 新事業進出補助金、成長加速化補助金 |
承継・次世代期 | 事業承継・引継ぎ補助金 |
3.補助金の概要解説
- 省力化投資補助金:省人化・無人化等の取り組みを支援し、生産性向上や人手不足解消を目指す補助金。
- ものづくり補助金:中小企業による新製品・新技術の開発、設備投資を支援。技術力や市場性が評価されます。
- IT導入補助金:ITツール導入による業務効率化やDX推進を支援。小規模企業にも活用しやすい。
- 小規模事業者持続化補助金:販路開拓や広告宣伝、Webサイト制作費などが対象。地域密着型の小規模事業者に有効。
- 事業承継・引継ぎ補助金:後継者による新展開やM&Aに伴う経費(専門家費用、設備など)を支援。
- 新事業進出補助金:新規事業への進出により、成長・拡大を図ることを支援。
- 成長加速化補助金:地域経済にインパクトを与える成長企業の投資計画を支援。特定分野への集中投資に有効。
4.申請までの準備内容
補助金の申請までの流れは下記のようになります。小規模事業者持続化補助金を例に紹介します。
①補助金制度の確認:公募要領を熟読するとともに、最新の公募要領・申請様式を公式サイトで確認します。
②事業内容の検討:補助対象事業か確認します。例として、広告、HP作成、設備導入などが対象となります。
③商工会・商工会議所と連携:事業支援計画書(様式4)の発行依頼をお願いします。地元の商工会・商工会議所との面談が必要(予約制の場合あり)です。
④事業計画書の作成:補助事業の内容・費用計画・効果などを記載します。フォーマットに沿って分かりやすく記述することが採択の鍵です。
⑤GビズIDの取得(電子申請用):jGrantsで提出する場合に必須です。取得には1~2週間程度かかるため早めに申請しましょう。
⑥添付書類の準備:履歴事項全部証明書、納税証明書などの添付書類を早めに準備しましょう。
⑦電子または書面で申請:jGrantsもしくは郵送で申請します。近年は、電子申請が多いです。
5.採択から補助金が支払われるまでの流れ
採択され実績報告が承認されて初めて補助金は支払われます。予め、余裕のある資金計画を立てておきましょう。
①採択通知:審査結果が通知される(採択・不採択)。公募締切から1.5~2か月後が目安です。
②交付決定:採択後、補助対象経費の再確認が行われます。この日以降に契約・支払いを行います。(遡及不可)
③事業の実施:実施期間内に事業を行い、支払い完了させます。領収書・振込記録などの保存は必須です。
④実績報告書の提出:成果・支出内容の報告です。実績報告の内容によって補助額が確定します。
⑤補助金の確定通知・請求:確定額が通知され、請求書を提出します。
⑥補助金の入金:指定口座に入金されます。実績報告から1〜2か月後が目安となります。
6.まとめ
補助金は単なる資金調達手段ではなく、企業の成長フェーズや戦略と組み合わせて活用することで、投資効果を最大化できます。経営者のビジョンに即した補助金選定と、成長戦略との整合性が成功の鍵です。
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